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サンプル:墓標(三人称/一人SS/ファンタジー)

 その亡骸はいつかそう口にしていたように、大樹の根元に埋葬された。 葬儀と呼ぶには余りに質素な別れの儀式には、生前親しくした少人数で木々のざわめき中執り行われた。 墓標となったのは泉のほとりにあった石だった。 その墓の主のために丁寧に磨かれ…

サンプル:放課後の教室(三人称/二人SS/現代)

 明け方から降りはじめた雨は、六限目が終わる頃には止んでいた。 生徒たちはすっかり邪魔な荷物となった雨傘を手にして学校をあとにする。 学校内で最も古い西校舎には、理科室や調理室などのあまり使われない教室しかない。 放課後のこの時間帯に訪れる…